歴史があり由緒正しき深川の八幡さま。下町情緒に溢れた門前町で、起こってしまった事件はまるで小説のようで耳を疑うばかり。年越し、新年を迎えるこの時期に、地域の方達の心中、如何ばかりかと胸が痛む。
地下鉄の駅の階段を上ると、屋台からのソースやイカ焼きの匂いが漂い始め、地上に出るといきなり賑わう商店街、大勢の参拝客、門前の漬物屋さん、と次々に目に浮かぶ光景のなか、私にとっての門前仲町は駅前にある居酒屋「魚三」。活気があって行列が絶えない魚三は、とにかく安くて、美味しい。最初に行ったのは思えばもう30年も前のこと。仕事終わりのお父さんが、一人立ち寄り1,000円でササッと飲んでつまんで帰るようなカウンターのみの1階で、今思えば完全に浮いていた私。いくら諸先輩のおじちゃん達に連れてかれたとはいえ、場違いも甚だしい、親父ギャルなんて言葉が流行る前の話。
お店の主のような貫禄のおばちゃま、当然私に冷たくて(笑)。女子が来るような店じゃないよ、とばかりに、オーダーは飛ばされるし、無視される。だけど今よりもっと大食いで、ビールをたくさん飲む私に次第に笑顔を見せてくれるようになった。苦笑いだったけど。
その日終いには「アンタまだ飲むの!」と呆れられ、おそるおそる次に行った時には「こっちに座りなさいよ」と笑顔で手招きしてくれて、それからは、通ううちに裏メニューを出してくれるようにもなった。温かく嬉しい思い出深い、門前仲町と私。
北海道のうちのお寺と比較しちゃいけないのは重々わかるのだけど、一人でスーパーカブに乗って、檀家さん回りをしていた祖父の姿と、運転手さんがいて銀座を豪遊、等という話は、同じ宗教家とはとても思えない。
身内びいきになるが、祖父のお説教は評判が高く、子供の時分でも聞き入った。鬼ごっこや隠れんぼで遊んでいて、結界を超えてしまい、見つかり一晩中納骨堂に入れられた。
本来、正道に導くはずの環境にありながら、何故に道を誤ったのか。
江戸情緒と人情に溢れた、正しく趣深い門前仲町に、早く、早く、戻りますように。